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撃たれた米軍兵士と採血~痛みの科学~

column

2021.02.16
  • コラム

とある米兵の実話

イラクに従軍したある米軍兵士は、

いきなり目の前で敵の手りゅう弾がさく裂し、

破片が体に刺さった状態だったのにも関わらず、

銃撃を受けながら、目の前のひん死の仲間を

助け続けました。

戦闘中、彼は、身体に銃撃で跳ね上がった

土や石がぶつかる感覚がありました。

実は、左足、右腕に被弾し、骨折していました。

やがて、出血で倒れてしまいますが、

生還し、勲章を受けることになります。

 

それでも注射は痛い

戦場というのは恐ろしいものですね。

第二次世界大戦中の従軍医師の調査によると、

大けがをした兵士の約75%は、

戦場で、すぐに鎮痛剤を打とうかというと、

大した痛みではないからいらないと言ったそうです。

しかし、病院で回復途上にあるときは、

採血が下手でちょっと痛みを感じたりすると、

猛烈に文句をつけたといいます。

戦場で撃たれていても、

採血の痛みは強く感じられるわけです。

 

痛みに意識を向けるかどうか

仲間の命を救うことに集中して、

自分の身体に注意が向いていない状況などは

痛みの刺激から注意が引き離されます。

この様な状況下では、

痛みの度合いの主観的な評価が

下がることが分かっています。

 

反対に、採血の時のように、

痛みに集中するような状況だと、

痛みの評価が高まります。

 

痛みの科学

脳は痛みについての全ての情報を受け取って、

知覚や反応を上げ下げしているわけではなく、

脳で考えていること

(例えば感情的や情動的な部分)

が、感じ方を調整している

ということが分かっています。

 

しかも、痛みの不快さを長く経験すると、

不安感が強くなっていき、それによって、

さらに痛みの不快さが増す

という悪循環が発生します。

特に慢性の痛みの治療で、

精神安定薬が有効なのはこういうメカニズムです。

気分障害者は慢性痛を発症するリスクが高い

ということもこのメカニズムを裏付けていると言えます。

 

不安を取り除き痛みを取り除く

不安と痛みは密接な関係があります。

我々の身体は痛いものが痛いわけではないのです。

現実と自分の身体の間にフィルターがあって、

それは自分の気分で随分変わっていくのです。

 

これを頭に入れておくと、

瞑想や呼吸法といった方法によって、

自分の不快な感覚、慢性的な痛みを

すばやくコントロールできるようになります。

 

【顧問医師】

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