ビタミン
column
- コラム
今回のコラムは顧問医師が担当です。
「ビタミン」について、
いつもと少し違った視点で取り上げます。
人間の体は、いかに奇跡的にできているか、
医学部の解剖学の授業では嫌というほど教えられますが、
実は設計ミスかと思われるくらい、
非効率的な構造もいくつかあります。
というか、そもそも、
かかってしまう病気の種類が多すぎます。
病気の数は、他の動物に比べて圧倒的に多く、
僕たち医療従事者を悩ませています。
その中で、ビタミンと呼ばれる物質群はよく
「不足しがちのビタミン」としてCMでよく目にします。
人間が自分で合成できないビタミンは他の動物に比べて多く、
多くは遺伝子に変異が起きて、
生命の維持に必須であるにも関わらず、
自分で合成できなくなってしまっているのです。
ではなぜ、生命維持に不可欠にもかかわらず、
我々は生きていけるのでしょうか。
それは、食事からの摂取で、それらが合成できなくても、
生存できるからです。
したがって、我々は他の種に比べて圧倒的に
多くの種類の食物を必要とします。
例えば、ビタミンC。
これは人間では合成できませんが、
人間が住んでいた熱帯雨林に豊富な
柑橘系の果物で摂取することができます。
逆に、なぜ犬が米と肉だけで生きていけるのかというと、
犬は自分でビタミンCを合成できるからなんですね。
人間に話を戻しましょう。
文明が発達してくると、生活環境が変わり、
それらの変異が裏目に出ることがあります。
代表的なのが壊血病で体中の組織が崩壊してきて
出血、貧血などを生じます。
大航海時代の水夫たちはこれで多くの命を落としました。
環境によって形作られたビタミンなどの
必要な栄養素の合成能力と、
文明が進んで食生活が変わったことでずれが生まれ、
ビタミンも不足しやすくなっています。
栄養素の不足も進化学の視点から見ると面白いですね。
生活様式の変化とともに
何が不足してきているのかも理解できます。