お腹が痩せるエクササイズなのか、お腹が痩せている人がやっているエクササイズなのか。
column_maeda
- 前田岳人
- コラム
お腹痩せしたい!
「お腹痩せしたい!」
そう、それは切実なことでしょう。
6月も中旬から下旬に差し掛かり、今年は既に夏の様相。
暑い。
薄着の季節だ。
なのに……お腹のお肉が……。
痩せたい!!
そのお気持ちにW-GYMはお答えしたいと心から思っています。
ですが、ちょっと落ち着きましょう。
そもそも「痩せる」ってなんだ?
話はそれからです
「痩せる」という言葉に孕む危険性
先に断っておきますが、W-GYMでは「痩せる」という言葉はまず使いません。
使うとしたら病気で栄養が摂られなくなって体重が落ちてしまった場合です。
「痩せた」
「痩せ細った」
「痩せ衰えた」
そう、「痩せる」は「ヤマイダレ」の漢字ですから、本来は病的な状態に対して使うものです。
美しい身体を創ることをコンセプトにパーソナルトレーニングをご提供しているW-GYMですから、このことには敏感なのです。
ただ言葉というのは生き物ですから時代と共に使われ方が変わっていくというのも重々承知しています。
例えば「お前」とか「貴様」も元来は敬語であったようですが、現代社会で目上の人に使ったらそれこそ「お前ぇ!」とか「貴様ぁ!」といって怒られてしまうでしょう。
それでも「痩せる」に関しては「土地が痩せる」とか「痩せる思い」とか「痩せても枯れても」という慣用句が未だに残っていることを考えると、やはりどうも前向きな意味合いで使うことが適切とは思えません。
胡散臭いと思われるかもしれませんが「言霊」というのはありますから、「痩せる」という病の危険性が孕んでいる言葉は使いたくないというのが私たちの考え方です。
シェイプアップという考え方
「痩せる」が不適切なら、いったいどういう言葉を使えばいいのでしょうか。
「減量」というのもひとつですね。
ボディビルや体重で階級が分かれるスポーツであれば「減量」という言葉を使います。
またボディビルの様に筋肉の大きさを競うスポーツをしている人に「痩せたね」というと不機嫌になります。
そりゃそうです。
せっかく身体を大きくしようとしているのに「痩せたね」なんて言われたら凹むに決まっています。
言うならば「絞れたね」か「仕上がってるね」です。これなら笑顔になります。
またこれはカタカナ言葉ですが「シェイプアップ」もなかなかいい言葉です。
あまりカタカナ語を使うのが好きではないのですが、これは便利な表現だなと思います。
英語で「shape up」というと「きちんと振る舞う」とか「襟を正す」とか「しゃきっとする」という様な意味で、「体調を整える」とか「身体を鍛える」という意味合いもあります。
一般的に「痩せたい」と思っている人には、この「シェイプアップ」という概念が合致するのではないでしょうか?
せっかく取り組むのですから、きちんと整った身体に仕上げたいものです。
お腹が痩せるエクササイズなのか、お腹が痩せている人がやっているエクササイズなのか
とは言ったものの、時代の流れと共に「痩せる」という言葉はある一定の市民権を得ようとしているようにも見えます。
特にSNSやYoutubeなんかでは「お腹が痩せるエクササイズ」みたいなものが跋扈している。
私はそれを見る度に「病気になるエクササイズなのか?」と怪訝な顔をしてしまうのですが、まぁ「お腹をシェイプアップさせる」という意味合いなのでしょうね。
それはさておき、果たしてそのエクササイズをして本当にお腹はシェイプアップできるのでしょうか?
これは何とも言えないところがありますが、ほとんどの場合は眉唾物であると言って差し支えないと思います。
そもそも本当にポッコリお腹が気になる人は、それ以外の部位も気になっているはずですし、お腹ばっかり集中してエクササイズをすることに特段メリットはありません。
大切なことは全身を心地よく動かして、日常の運動量を増やす様に工夫することです。
こういうエクササイズのほとんどはお腹をターゲットにしているという事情から、寝転がって行う種目が非常に多いのですが、そもそも運動不足ならば寝てないで立ち上がりなさいよ……というのはツッコミポイントです。
また「減量」が必要なのであればまず取り組むべきは食事内容の見直しです。
「ダイエット」というのは「食事」のことですから、肥満体でお腹が気になるのであれば腹筋エクササイズをやる前に何を食べているかリストアップした方がよっぽど役に立ちます。
そしてもうひとつSNSやYoutubeのツッコミポイントを挙げるとしたら、それは「お腹が痩せるエクササイズなのか、お腹が痩せている人がやっているエクササイズなのか」ということです。
ほとんどが後者でしょう。
動画作成の努力や拡散力には脱帽しますが、それはそれ、これはこれ。
もちろんある程度誇大な表現をしないと拡散されにくいという事情もあるでしょうし、容姿端麗な女性がお腹を出してエクササイズをしている動画にある一定の需要があるということも分かります。
でも、それはそれ、これはこれ。
その情報が発信者の利益を生むこと自体を否定することは出来ませんが、受け手の利益になり得るものなのかは受け手がよく考えるべきですね。
SNSやYoutubeの情報は疑ってかかるべし
情報過多の時代においては、情報を受け取る側の読解力がとても重要です。
発信者はあらゆる手段を使って拡散を狙いますから、カモにされないことです。
それは権威があるとされる科学論文に目を通す時も同じこと。
「これは本当か?」「なんか上手く言いくるめられていない?」と一度疑うことです。
一度ならずとも、何度も何度も疑ってかかりましょう。
そうしている間に「こんな情報は不要であった」となるかもしれませんし「参考になることが書いてある」となるかもしれません。
W-GYMではこんな具合で、適切に健康や身体作りの情報を受け取ることのできる読解力の向上にも力を入れています。
でも、多分もう大丈夫ですよね。
「お腹が痩せるエクササイズ」は「お腹が痩せている人がやっているエクササイズ」。
そういう発想を持って情報に触れるだけ。
そして「痩せる」エクササイズなんて、そもそも表現がおかしい。
そんな情報はスルーする。
そういうことです。